
【就任のご挨拶・提言】
宮城県の高校教育のこれからについて
― 宮城県民の皆様へ ―
このたび、宮城県私立中学高等学校連合会会長を拝命いたしました。
その責任の重さを深く受け止めるとともに、宮城県の中等教育の充実と発展に向け、関係各位と連携しながら取り組んでまいる所存です。
本連合会はこれまで、公立・私立の枠を超え、宮城県における中等教育の振興に寄与してまいりました。今後は、少子化の進行や教育ニーズの多様化といった大きな環境変化の中にあっても、生徒一人ひとりの可能性を最大限に引き出す教育の在り方を追求してまいります。
さて、現在、宮城県の高校教育は重要な転換期を迎えております。
こうした状況を踏まえ、県民の皆様にぜひご理解いただきたい点と、今後の方向性について、以下の通り提言申し上げます。
■ 宮城県の高校教育は「協働」により築かれてきました
宮城県における高等学校教育は、県立・市立・私立の各学校がそれぞれの役割を担いながら、長年にわたり相互に補完し合う形で発展してまいりました。
とりわけ仙台市およびその周辺地域においては、明治維新以降の近代教育の黎明期から私立学校が設立され、戦後の教育需要の拡大期においても、県全体の教育の充実と人材育成を支える重要な役割を果たしてきました。
■ 少子化は「課題」であると同時に「可能性」でもあります
少子化により生徒数が減少している現状は、学校運営にとって大きな課題である一方、生徒一人ひとりに対して、より丁寧で質の高い教育を提供できる環境を生み出す契機でもあります。
この変化を単なる縮小として捉えるのではなく、教育の質的向上へとつなげていく視点が重要です。
■ 就学支援金制度について正しい理解をお願いします
近年、「就学支援金制度」に関する誤解が一部で見受けられます。
この制度は、私立高校に在籍する生徒のご家庭に対し、国が授業料負担の軽減を目的として支給するものであり、学校への補助ではなく、生徒・保護者への支援制度です。
したがって、私学振興助成法に基づく「私立学校の運営費補助」とは性質が異なります。
教育の機会均等を支える重要な制度として、県民の皆様に正しくご理解いただきたいと願っております。
■ 高校進学の変化は「多様化」が大きな要因です
一部には、就学支援金の拡充により「公立高校への進学者が減少した」との見方もありますが、進学動向の変化は単一の要因で説明できるものではありません。
宮城県教育委員会のホームページによれば、宮城県における通信制課程への進学者数は、令和2年3月の612人から令和7年3月には1,036人へと増加しており、わずか数年間で約1.7倍に急増しています。
さらに注目すべきは、その内訳の変化です。県外私立を含む広域通信制課程への進学者数は、平成21年には131人であったものが、令和7年には636人にまで増加しており、通信制進学の中でも大きな割合を占めるようになっています。
このような動向は、従来の全日制課程を中心とした進学構造から、多様な学び方を前提とする新たな進路選択へと移行していることを示すものであり、高校進学動向の変化を特定の制度のみで説明することの難しさを示しています。
したがって、現在の進学動向を論じるにあたっては、就学支援金制度のみを要因とするのではなく、生徒の価値観の変化や教育ニーズの多様化といった社会的背景を含め、多角的な視点から冷静に議論を進めていくことが重要です。
■ 地域と高校の関係を大切にする視点を
地域に所在する高等学校は、教育の場であると同時に、若者の定着、地域文化の継承、将来の担い手育成など、地域社会の維持にとって重要な役割を担っています。
規模の大小にかかわらず、地域の実情に応じた高校の存続は、教育政策であると同時に地域振興の観点からも重要です。
■ 公私立が共に議論する場の活用を
宮城県には、公立・私立の教育関係者が議論を行う「公私立協議会」という重要な場が設けられています。
この場をさらに活用し、将来の高校教育の在り方について率直かつ建設的な議論を重ねていくことが、宮城県全体の教育の質の向上につながると考えます。
■ 結びに
宮城の高校教育は、これまでも多様な主体の協働によって支えられてきました。
そしてこれからも、生徒一人ひとりの可能性を最大限に引き出すためには、県民の皆様のご理解とご支援が不可欠です。
宮城県私立中学高等学校連合会は、今後とも関係機関と連携しながら、開かれた議論を重ね、宮城の未来を担う人材育成に努めてまいります。
何卒ご理解を賜りますようお願い申し上げます。
令和8年5月吉日
宮城県私立中学高等学校連合会
会長 加藤 雄彦